特別養護老人ホームは、「終の棲家」と言われています。それは、人生最期を過ごす最後の家として捉えられています。そのため、当施設は看取りについて、真剣に考える施設であります。
急にやってくる「最期の時間」というのは、ときに家族の冷静な判断を狂わします。だからこそ、我々は看取り期がやってくるたびに、利用者のご家族へ喚起する考えがあります。
本当は食べられなくなるから死ぬのでなく、死にゆく体だから食べられなくなるということ。
体が終末期へ向かっての準備を始めていて、水分や栄養も必要な分だけしか欲しないという状況の中で、無理に栄養や点滴を入れてしまうと、かえって痰がらみや、むくみになり、腹水がたまったりと、結果的に本人を苦しめてしまいます。
実際に、看取り期に移行すると、ご家族の不安から点滴をいれて欲しいとご要望があります。仮に病院に転院したとしても、ご飯を食べられないのは病気でないので、終末期の老衰死と同じように、点滴を入れるしかなく、痰が絡んだり、体のむくみを誘発してぶよぶよになって苦しむケースが多いです。
また、病院は治療をする場所なので、本来は死を迎える場所ではありません。病院で亡くなったご遺体というのは、誰にも見せずに霊安室に運び、退院時も誰にも見せずに裏口から退院します。老人ホームでは、利用者が亡くなった時は玄関からスタッフが集まってお見送りをしています。
大切なことは、本人の御意志を元気なときに腹を割って話すことです。日本は縁起でもないといって死について話を避ける傾向にあります。それがゆえに、日本人は8割が病院で亡くなっています。福祉先進国のスウェーデンやオランダは、在宅や施設で亡くなる方が同様に8割です。この違いは、死に対して勇気をもって向き合っていて、大切な人と話し合っていることの結果と思います。
人生の99%が不幸でも、最後の1%が幸せなら、その人の人生はシアワセになります。
最期を納得いくカタチで迎えられるよう、出来る限りのご支援をしていきたいと思います。
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