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「正しさ」とは、何か。

  • 執筆者の写真: 広 天田
    広 天田
  • 4月22日
  • 読了時間: 3分

ハーバード大学のマイケル・サンデル教授は、『これからの「正義」の話をしよう』の著書の中で、ある問いを投げかけます。


「正しい行いとは何か?」

「善く生きるとはどういうことか?」


彼は“正義”の考え方を3つに分類します。


一つ目は、「幸福の最大化」。

これは功利主義に基づき、「一番多くの人が幸せになるなら、それが正しい」とする考えです。政府も、国民の多数派の利益を中心に政策を進めます。けれど、少数の声や、数値化できない“想い”は、しばしば後回しにされてしまいます。


二つ目は、「自由の尊重」。

自由至上主義に基づき、「個人の選択こそが正義」であり、政府は極力介入すべきでないという立場です。自分の人生は自分で決める。ただしその一方で、社会のつながりや相互扶助の必要性が軽視される傾向もあります。


そして三つ目は、「美徳の促進」。

これは、社会が共通の善や理想に基づいて正しさを判断しようとする立場です。宗教、哲学、武士道のような文化に根差した“徳”や“使命”に価値を置きます。サンデル自身は、この考え方に重心を置きながら、「私たちは何を大切にする社会を望むのか」を、みんなで議論すべきだと説いています。


この3つの考え方を、福祉の現場に置き換えてみると、いろいろな気づきがあります。


介護現場にも、数字や効率を求められる場面が多くあります。「より多くの利用者を受け入れる」「業務を早く回す」——これは“幸福の最大化”に似ています。


また、「働き方はそれぞれ自由でいい」という考え方も、いまの時代には重要かもしれません。


でも、私たちが本当に目指したいのは、それだけではないはずです。


わたしたちが大切にしてきたのは、その人らしさを守ること。相手の立場に立って想像し、寄り添うこと。ともに幸せになることを諦めない、という姿勢。


これはまさに、サンデルの言う「美徳の促進」。つまり、「共通善をともに考え育む営み」に近いと、私は感じます。


介護・福祉という現場においては、正しさは誰かが一方的に決めるものではなく、その場にいる人たちが一緒に悩み、対話を重ねながら見つけていくものです。


だからこそ、リーダーの役割とは、命令を出すことではなく、チームの中心に立って「私たちは何を大切にしたいのか?」を問い続けることだと、私は思います。


これまで私は、新規事業や採用に集中するあまり、育成や対話の時間が十分に取れていなかったという思いがあります。しかし、だからこそ、ここで立ち止まり、あらためて誓います。


私は、仲間とともに「正しさ」や「幸せ」について語り合えるチームをつくります。一人ひとりが「自分の家族に勧めたい」と思えるような仕事に、心から誇りを持てるように。その空気を育む“火種”になる覚悟を、いま持っています。


ともに悩み、支え合い、喜び合える福祉チームを、ここからまた一緒に創っていきます。




 
 
 

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